書評 | Google上位表示64の法則 藤井慎二郎著

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今回はSEOの書評である。
SEOの書籍というと、先月松尾茂起氏が「WordPressで加速させる!ソーシャルメディア時代の新SEO戦略マニュアル」を上梓し、話題になったのでこれは読まれた方も多いだろう。
それに隠れるようになってしまったせいか、残念ながらあまり話題にならなかったSEOの書籍がある。

「Google上位表示64の法則」である。

SEOを専門でやっている人にしか読まれなさそうな書籍であるが、今回はこの書評をやってみたいのだ。

タイトルは地味だが、帯についているサブタイトルはすごい。

SEOの「都市伝説」をぶった斬る!
1万2500ページの検証で、勘と経験則のSEOが終わる。

だそうだ。
SEOを職業としている、あるいはSEOを研究しているという人にとっては、魅惑的にすら感じるキャッチフレーズだろう。

そうして実際に手に入れてみると、今まで見たことのない本だった。
SEOの理論書は文系的な論述が多い中で、統計的手法を駆使した純理系的な考察が斬新だった。

さて、著者の藤井慎二郎氏について紹介しておこう。
藤井氏はソーシャルメディアなどでほとんど情報発信していないので、知っている人は少ないかも知れないが、株式会社Axisという札幌のSEO会社の代表である。表に出てくることはほとんどないもののキーワードの扱い高において国内屈指のSEO会社だ。

氏とほんの少しだけお話をさせていただいたことがあるのだが、並々ならぬ経験の裏付けが感じたものだ。
個々の施策の要素がどれだけ重み付けを持っているか、膨大な検証結果の蓄積が感じられたのである。

それでは本題に戻る。

本書はSEOの64の仮説を取り上げ、統計的にその仮説が正しいかどうかを検証したものだ。

SEOは複雑系であるというのが私の持論だ。
複雑系の例として天気予報がよくあげられる。
個々の地点のわずかな風の流れ、湿度といったものが全て気象に影響を及ぼす。

「バタフライ効果」という言葉がある。
東京で蝶が飛んだら、その空気の流れの影響によってニューヨークに雨が降ったりしてしまうという意味である。
これこそ複雑系の本質を言い表している言葉だ。ほんのわずかな事象が数多く組み合わさって未来は決定する。
言い換えると未来に影響を及ぼす事象の数が多すぎて、未来を正確に予測することができないもの、それが複雑系というものの一つの意味である。

SEOはまさしく複雑系なのだ

Googleは200を超える指標を用いて順位計算を行なっているため、施策を行った際に順位がどう変わるかという正確な予測を行うことができない。
だから、SEOに携わる人間のほとんどはおおよその指標によって進路を決めている
天気予報の例でいえば、

「富士山に傘がかぶると雨が降る」
という言い伝えがある。
富士山の笠雲を河口湖側から望む
こんな感じに富士山の頂上部分に、傘のような雲がかかった後に雨が降る確率が高いことはよく知られている。実際に24時間以内に雨が降る確率は70%以上になるという。

SEOに関する経験もこれに非常に近い。

Googleがガイドラインに明記している施策以外は、全てこれと同じような経験則である。
いやになるほど、うんざりするほど散々議論されている問題として、
「検索キーワードの比率は○○%がよい」
というものがある。
Googleは別にそんなことを明言していないが、経験則で何%ぐらいがいいと言っている人が多いということだ。

先ほどの富士山に笠がかぶると雨になるかは、統計的に検証したところ正しいということが分かっている。
「Google上位表示64の法則」は富士山の例と同様、SEOに関する経験則が統計的に正しいかを検証している。
それが前述の「1万2500ページの検証・・・」というキャッチフレーズだ。

本書の分析によれば検索キーワードが1語であった場合

  • 検索10位以内のグループのキーワード含有比率の中央値は約2.1%、平均値は約3.3%
  • 検索20位以内のグループのキーワード含有比率の中央値は約2.1%、平均値は約3.5%
  • 検索30位以内のグループのキーワード含有比率の中央値は約2.2%、平均値は約3.5%
  • 検索40位以内のグループのキーワード含有比率の中央値は約1.9%、平均値は約3.3%
  • 検索50位以内のグループのキーワード含有比率の中央値は約1.7%、平均値は約3.2%

意外に含有比率が低いのがわかると思う。
そして、検索順位間において若干の比率の差があることは確かなようだが、大きな差ではないということがわかる。
本書には、キーワード比率だけではなく、文字数における統計分析もなされており同時に考察がなされている。
どうやら、単純な比率ではなく文字数との兼ね合いがあるとのことだ。

複数の考察を関連付けてもおり、非常に興味深い調査もある。

  • 仮説58:サイト内リンクが多いと検索順位が上がる
  • 仮説59:サイト外リンクは検索順位とは関係ない
  • 仮説60:サイト内外へのリンクはリンク数のバランスが評価されている

といった調査は仮説58・59から仮説60に考察を深めているのが面白い。
結論としてはリンク数のバランスは評価されているという結論である。この結果は非常に頷けるものであった。


とはいえ、この統計的手法については一つ問題がある。
1つだけ例示してみよう。

仮説4:本文の文字数が多いと「情報が豊か」と判断される

において順位と文字数に関連があることは確かに示されている。

しかし、文字数が多いページはナチュラルなリンクがついて、上位表示しているかも知れない。
あるいは、WEBサイトにかけられる予算が豊富にあって、様々な施策を行なっているという可能性もある。

実際はこのように隠れた要因があるかも知れないのだ。
とはいえ、このような考察は決して無意味ではない。

我々はGoogleの中身を直接見ることはできない。
外面的な様々な状況を分析して、Googleはどのように評価をしているのかを間接的にしか知ることができない。
Googleは何をどのように評価しているかを知る手法として、統計的な分析は数少ない有力な手法だ。

労作ともいえる膨大な調査と考察があるので是非一読を薦めたいのである。

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