SEO業というビジネスモデル


久しぶりにSEO業者のことについて書いてみたいと思う。

以前、Ray Grieselhuber氏に聞くアメリカのSEO事情という記事を書いた。
欧米では被リンクの提供によるSEO業者はほぼ死滅したというインタビューの内容を書いた。

しかしながら、被リンクによるSEO以外の他のビジネスでSEO業者が生きていく方法がなかなか思いつかない。

ホワイトハットのSEOサービスというものも確かに存在はする。
サイト内の改善やキーワードの洗い出しといったサービスの提供だ。

しかし、
それで食えるのか?

それが難問なのだ。
フリーのSEOコンサルタントなら食べていける可能性は大いにある。

だが、社業としてホワイトハットのみで食っていくのは難しい。
原因はどこにあるか?それはコンサルティング業の収益構造にある。

1.コンサルタントが5人在籍する会社が
20坪ぐらいの事務所を借りた場合の月間の収益モデルを考えてみよう

まず支出はどうなるだろうか?

  1. コンサルタント人件費・役員報酬(福利厚生費込)
    60万円×5名
  2. 事務員人件費(福利厚生費込)
    40万円×1名
  3. 家賃
    25万円
  4. 営業経費
    10万円
  5. パソコン・コピー機原価償却費・リース代
    6万円
  6. 水道ガス光熱費
    5万円
  7. オフィスの備品など減価償却費
    5万円
  8. 消耗品費
    3万円
  9. 電話・通信費
    3万円
  10. その他雑費
    10万円

となり合計407万円ぐらいかかる。
収支と支出が釣り合う売上金額を損益分岐点という。
この金額を売上が割り込むと会社としては赤字、言い換えれば存続できないことになる。

この金額を5人のコンサルタントに割り振ると、1人当たり81.4万円。
忘れてはならないのは、コンサルタントがフルに稼働しての金額であることだ。

営業活動が不調で案件が途切れたりして、稼働があいてしまうケースはごく普通にある。
上記の試算には営業担当者を含めていないので、コンサルタントも営業活動を行わなければならない。
社長などはコンサルタント兼営業ということになるだろう。

営業活動や案件の隙間が生じることにより、稼働率を80%になったと仮定すると(80%稼働したらなかなか立派だと思う)、コンサルタント1人あたり月間101.75万円の売上が必要だ。

もう一つ重要なこと。

「会社は利潤を生みださなければならない」

月間約102万円を売上げたとしても、プラマイゼロである。
この5割増しぐらいは欲しいところだ。
1人当たり月間153万円の売上があっても従業員1人当たりの年間売上高は1,530万円となり、一般的な基準に照らしてみるとほめられた数字でもない。
それでもこの数字を目標としてみよう。

ホワイトハットSEOで、月間153万円コンスタントに売り上げることはできるのだろうか?

ホワイトハットのSEOであれば、顧客に提供するサービスは競合分析・キーワードの選定・内部施策の指示書といったサービスになろう。
これに14日(月間の稼働日の3分の2)を費やしたとする。

すると、14日間の作業の対価として102万円の請求をしなければならない。

102万円をSEOの対価として支払うためには、SEOによって対価を上回るリターンが必要だ。
しかし成果報酬型SEOと異なりホワイトハットSEOはどれほどの効果が出るか、やってみなければわからない。
効果が出ないリスクを織り込むのなら、うまくいった場合には3か月程度で投資を回収できないとやるメリットが薄いと考えられるだろう。

月間34万円以上SEOによって利益の増大が見込めるWebサイトしか、この種のコンサルティングを依頼するメリットは薄いことになる。
利益率が50%の商品を扱っているならば、売上ベースで考えれば月間68万円の増大が必要だ。

月間の売上が100万円ぐらいしかなければ、この種のSEOコンサルティングを導入する決断はしにくいだろう。
ECを専門に行っているショップですら月間の売上が100万あるサイトはそれほどあるわけでもない。

そして、Webサイトからの集客を本業としていない、ほとんどの会社では月商ゼロが普通だ

これだけの投資を決断させる必要があるSEOサービスは、企業が提供するサービスとしてニッチなものであると言えよう。

2.SEOをフリーランスが提供する場合の収益モデルはどうなのか

フリーランスであれば対価イコール自分の稼ぎとなるため、法人としての利益は不要だ。
また、自宅を事務所としていればその他の経費はほとんど不要になる。
自分一人の稼働を充足させればいいのであれば、営業活動も不要かもしれない。

営業活動をしないのであれば、月間60万円稼ぎたければ1ヶ月あたり60万円だけもらえばいいことになる。

これに14日(月間の稼働日の3分の2)を費やしたとする。
14日間の作業の対価としては40万円の請求をすればよい。

この場合は、同様に計算すると、利益率が50%の商品を扱っているならば、月間26.6万の売上増大があればよい。
だいぶ敷居が下がる。
また、重要なこととして、

100万の投資と40万の投資は決裁者が違う可能性が高い。

のである。
100万円を決裁するのであれば社長や役員の決裁が必要だが、40万なら部長や課長の決裁で済む会社も多いだろう。
その意味でもグッと敷居は下がるわけだ。

3.被リンクを提供する場合の収益モデルはどうなのか

会社の損益分岐点は変わらないとする。
しかし、決定的な違いがある。

ホワイトハットSEOを提供するビジネスでは、コンサルタントの人数以上には稼げない。

ここが決定的に違うのだ。
ホワイトハットSEO会社で売上げを増やそうと思ったら、コンサルタントを増やすしかない。
売上を2倍にしようと思ったら、コンサルタントの人数を2倍にするしかないのだ。

しかし、コンサルタントを増やすことは2つの理由でむつかしい。

・案件を継続的に受注できるとは限らない

そもそもホワイトハットSEOサービスはニッチなサービスなので、継続的に新規の案件を受注し続けることは困難だ。
従ってコンサルタントを増やすことは経営上のリスクを大きく増やしてしまう。
3人分しか案件がなかった場合、コンサルタントが5人であった場合は57万円の黒字だが、10人であった場合は243万円の赤字となる。

・SEOのコンサルタントが希少である

もし継続的に案件の受注ができるとしても、コンサルタントができるほどのSEOの人材は転職市場にほとんどいない。
これは人材紹介業各社にたずねてみたのだが、全くと言っていいほどこの職種の人材は出回らないようなのだ。

また、某SEO会社の社長さんから聞いた話でも、高レベルの人材はフリーランスでやっているということが多く、採用することは難しいとおっしゃっていた。
そうして、SEOを知らない社員を雇用して育成するにも、SEOには向き不向きのようなものがあり育てるのも困難だ。
SEOは正解のない学問のようなものなので、理系の優秀な学生でも一人前のSEOのエンジニアにならないこともある。

さて、営業上の理由・人材確保の理由により、ホワイトハットSEO専業では中小企業以上の規模の会社は作れない。
(大企業にするのがいいとは言いたいわけではなく、規模拡大を志向しても困難だと言いたいだけである)

ところが被リンク販売になると事情が変わってくる。
月間の経費はほとんど変わらないが、顧客数が増えてもコンサルタントの数をほとんど増やす必要がない。
事務員、営業担当者、SEOの補助員を増やせば回っていく。

また、比較的低価格で提供できるため、導入できる顧客数もはるかに多くなる。
コンサルタントが5人で年商売上10億も不可能ではない。

そうして、被リンク販売は継続性がある。
一度契約すれば、最低でも半年、場合によっては永遠に契約が継続する。
積み上げていけば経営が安定する。

ホワイトハットSEO専業であれば、同人数のコンサルタントだと年商1億円の程度の売上を作るのがほぼ限界だろう。
しかも、契約に継続性がなく安定しないのだ。

経営効率と安定性が圧倒的に違う。


被リンク販売はホワイトハットSEOというビジネスよりも収益性においてはるかに優れている。
しかし、現在は被リンク販売は岐路に立たされている。

ホワイトハットSEOサービスに転換を真剣に検討せざるを得ない状況になっている。
その際、現在高い売上を得ているSEO業者ほど業態の転換が難しい。

ホワイトハットSEOサービスに転換したら、現在売上が10億だったとしても、その10分の1になるかもしれない。
多くの事務員、多くの営業担当者、多くのSEOの補助員を抱えていくことは困難だ。

SEO業というビジネスモデルは大きな転換点に差し掛かっていると言えよう。

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2013/02/12 | コメント/トラックバック(4) |

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