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SEO小説 カニのオマージュ



月曜日から金曜日までの間に、アポイントを10個獲得できないと土日へ持ち越しだ。
土日は一般のオフィスは休みなので、サービス業の会社に電話をする。
書き入れ時で忙しくけんもほろろ。普段よりキツい。
土日もみんな出勤している状況だった。誰もがなかなかアポイントが取れないのだろう。

20人採用された新入社員の中で、1ヶ月の間に4人にまで減ったが、彼女は残っていた。
オホーツクの荒波で鍛えられた根性は半端なものではなかったのだ。

それだけ辞めたにも関わらず、電話を掛けている人数は変わっていない。
どこで採用しているのかもわからないのだが、辞めたらすかさず別の人が補充される。
どうやらインターネット関連の仕事っていうだけで、人は集まるらしい。

1ヶ月が経ち、今度はアポイントがとれた先に営業にも行くようになった。

「本当にどんなキーワードでも上位表示するの?」
「はい、お任せ下さい。」
「へー、すごいね。どんな秘密がなの?」
「企業秘密です。」

そう答えることになっていた。
まあ、実際に彼女は知らないので答えられるわけもないのだが・・・。

5回商談に行った日の事である。
契約がもらえたのだ。契約がもらえた日は定時で帰っていい決まりになっている。
この日は入社して初めて18時の定時で帰り、アパートで泥のように寝た。

その1週間後、また契約をもらった会社に訪問をした。
CDーROMに入ったソフトをインストールしてもらうためである。
契約をもらったのは従業員数5人という小さな会社だった。

今回の契約の担当者は社長だった。
社長はインターネットのことはあまりよく分からないようだった。
まあ、実際に詳しい人には彼女は説明できないので受注も取れるわけもないのだが・・・。

「これが順位を自動的に確認するソフトウェアになります。」

このCD-ROMをインストールし検索キーワードと対象URLを入力。すると、パソコンが立ち上がっている日は自動的に順位をチェックしてくれる。
簡単な順位チェックの画面を見せて社長に説明した。
人の良さそうな社長はうなずきながら、メモを取りつつ聞いていた。

インストールが終わって会社に戻ってきて、大変なことに気がついたのである。

「あ、CD-ROM忘れた・・・。」

最悪である。あのCD-ROMは必ず回収してこないといけない。
もし、回収し忘れたら解雇のみならず、罰金100万円を払うという誓約書を書かされているのだ。

社長に電話をしようとしたのだが、会社の電話は、

「恐れ入りますが、本日の営業は終了しました。また明日おかけ直し下さいますようお願いいたします。」

という録音のアナウンスが流れている。

急いで会社に行った。
しかし、まだ19時だというのにオフィスの電気が消えており誰もいない。
なんていい加減な会社!
彼女はその場でイヤイヤをして、一人で毒ついた後で上司に電話をした。

「状況はわかった。明日の朝イチで回収だ。社長が来るのをオフィスの前で待ち構えろ。」
「朝イチって何時ですか?」
「朝イチって言ったら6時だよ。」
「・・・分かりました。」

翌日は指示された通り6時に行った。
社長が来たのは8時頃で、2時間も無駄にしたがCD-ROMを無事に回収することができた。

しかし、罰金だそうである。
来月の給与から10万円天引きするとのこと。
そんなに引かれたらほとんど残らないじゃん。なのである。

会社をこの時ばかりは辞めようかと彼女は思ったのだが、北海道にいるたくさんの兄弟たちに仕送りしなくてはならないことを思い出した。仕方がないからまた会社に行くのである。

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コメント

  1. 伊藤公助 より:

    好子が最後、カワイソ過ぎる。。(T_T)

    ちょっとだけリアルで、最後が切ない特別企画ですね。
    長文お疲れ様でした。

    楽しく読ませて頂きました。

    北海道人なのに、
    タラバガニはカニじゃなくてヤドカリの仲間という事を知りませんでした(笑)
    勉強になりました(・∀・)

    • tamu より:

      ちょっとだけリアルってこんなSEO会社があったら嫌ですね。
      ここまでブラックハットを極めたらすごいけど、もはや社会の敵って感じです。

      そうそう、タラバガニはヤドカリの仲間なんです。
      コウモリと鳥がたまたま似てるのと同じですね。
      カニは足が10本ですけど、タラバガニは8本ですから、明らかに違う種類ってなわけで。

      まあ、どうでもいいんですけどね(笑


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