翌日から外に営業に行かないことになった。
そして、隣の部屋の部署に変更になった。

結局は1日電話。
彼女は話すのがかなりゆっくり目で、かつ話すのが苦手な方なので電話の本数がこなせないのだが、簡単なのでよかった。

「もしもし、株式会社ネットの佐藤と申しますが。
お世話になっております。
Yahoo!で検索した時に、
検索結果の上にある虫眼鏡が表示されているの部分に
御社名を表示するというサービスを行なっております。
1日たった千円ですので、SEOよりお得です・・・。」

だいたいこうやって電話すると速攻でお客から断られるのだが、100件かけると2件ぐらいは興味を持つお客もいて、けっこうアポイントはコンスタントに取れた。
あの一件以来、彼女は行かないので他の人が営業に行くので、その後のことはよくわからなかった。
外に営業に出るほうが、ガチャ切りとか怒られたりとかしないで済むのでいいのだが仕方がないのだろう。

しかし、ある日のこと、ほぼ2ヶ月ぶりぐらいに営業で外出することになった。
どうやらクレームの処理らしい。
客先に行く前に言い含められたことが1つだけあった。

「いいか、何を言われてもそれはGoogleダンスのせいだって言うんだぞ!」

彼女には意味がよく分からなかったが、それ以上説明されなかったので仕方がない。

なんだか分からないがお客はやはりカンカンになっていた。

「あのさあ、あんたの会社って詐欺だろ!上位に表示されているのって俺が会社で使っているパソコンだけなんだよ。家のパソコンや、他のパソコンだと順位ぜんぜん違うんだよ。これ絶対詐欺だろう!」

彼女にはお客の言っている意味がよく分からなかったが、とにかく会社で聞いてきた言葉を話した。

「ですから、それはGoogleダンスのせいです。」
「そうやって、素人だからってすぐお前らは馬鹿にするだろ!Googleダンスって何だよ!Googleが踊りでも踊るのかヨォ!」
「・・・。」
「何だよ。答えらんないのかよ。ネーちゃん。」

そりゃあ答えられないよ。って彼女はツッコミたかったが我慢した。

「とにかく今まで払った金、日額2万。返せよ、わかったか?」
「すいませんが、よくわかりません。」
「ああん?もう一回言ってみろ?」
「よく、わ、か、り、ま、せ、ん」
「なんだ、こんな簡単なこともわかんないのかよ。そりゃあ、そうだよな、テメエはカニだもんな。カニごときにわかる訳ないか。」

お客は好子を蹴飛ばした。
好子は裏返しになってひっくり返った。
足を動かし起き上がろうとするのだが、足は虚しく空をつかむのみで、起き上がることができない。

お客が好子を蹴り起こして、やっと起き上がることができた。

「取りあえず土下座して謝れ!いや、カニって言えばあれだ、あれをやれ!」
「あれって何ですか。」
「決まってるだろう、カニって言えば・・・、かに道楽だよ!」
「それだけは勘弁して下さい!
かに道楽はズワイガニです。私、タラバガニだから無理です!タラバガニはカニじゃなくて、ヤドカリの仲間だし、とにかく無理です。」
「いいからやれ!」
お客はその場にあった血のりがついたバットを振り下ろした。
キチン質の硬い甲羅はさすがに割れなかったが、好子は恐怖に観念した。

とれとれピチピチかに料理♪※なにわのモーツアルトことキダ・タローのかに道楽の動画が開きます

お客が歌う節にあわせて、かに道楽の動きを繰り返す。※かに道楽本店のカニの看板の動画が開きます

「お前が歌え!」

「・・・わかりました。
とれとれピチピチかに料理♪」

涙など出るわけもないカニの目に、涙が浮かんでいるように見えた。
1時間ほどかに道楽をやらされてやっと解放された。