久しぶりにSEOの書評である。
kindleの電子本である。
紙の本だとすると91ページ相当ということで、ボリュームも小さく挿絵などもなく、でも818円という強気の値段設定。
でもこの本は絶対に買いである。
ネットショップSEOと書いてあるが
- CMSを導入するサイト
- ニュースサイトなど多くのコンテンツを保有するサイト
- CGM的な要素があるサイト
- 大量の情報を扱うサイト
上記のようなサイトを運営しているWebマスターは必読である。
また、
- CGMサイトを構築するシステムエンジニア
- Webディレクター
- Webコンサルタント
といった職業の方にも役に立つだろう。
またSEO担当者やSEOコンサルタントも読むべきである。というか必読といって差し支えないと思う。
渡辺氏ぐらいのレベルのコンサルタントであれば、必要ないのかもしれないがほとんどの人にとっては多くの気づきがあるはずだ。
少なくとも私は至らない点が多いので、この本には多くの学びを得たのである。
最低限のSEOの知識があればわかるよう平易に書いてあるのだが、深い含蓄が込められている。
(とは言え機動戦士ガンダムのたとえは難しくてよく分かりませんでした。すいません・・・)
サラッと書かれている一文の中に込められた過去の経験に想いを致す。
そこに至るまでに試行した数々の試みなどが脈打って伝わってくるようだ。
kindleにブックマークをしながら読んだら、たったの91ページしかない本なのに、ブックマークだらけになった。
この本は書かれている情報の質に比較してとても安いと断言する。
これだけの知見をごく短い時間とわずかな金額で手に入れることができるのは素晴らしいことだ。
私として最も印象深く役立った一節を引用してみる。
過去のコンテンツをアーカイブしておきたい(2013 年のクリスマス用コンテンツを「/xmas2013/」、2014 年のクリスマス用コンテンツを「/xmas2014/」に格納する)ケースでは、たとえば、当年(2013年)のクリスマス商戦ページは「/xmas/」にしておきます。
そして、翌年( 2014 年)のクリスマスを迎える前には、まず「/xmas/」にある 2013 年分のコンテンツを「/xmas2013/」フォルダへ移動し、そして「/xmas/」には 2014 年分のクリスマス用のコンテンツを格納する、というふうにします。
以降は同様に、2015 年になったら 2014 年分は「/xmas2014/」、2015 年は「/xmas2015/」……といった具合に、つねに最新の年のコンテンツが「/xmas/」に入るようにすれば良いのです。
各々URLにはリンクといった資産があるため、変えずに同一にするべきだが、毎年変わるようなページはどうすればいいか?といった話である。
これは言われてみればごくごく当たり前なのだが、SEOの知識で無理やり考えようとするとわけが分からなくなる例だ。URLが変わったらリダイレクトしなきゃ…って考えるとわけがわからなくなる。
2013 年のクリスマス用コンテンツを「/xmas/」から「/xmas2013/」に格納し、「/xmas/」には2014年のコンテンツを用意する場合に、商戦が始まる半年ぐらい前から「/xmas/」から「/xmas2013/」リダイレクトさせてやるようにして、クリスマス商戦が始まったら「/xmas/」には改めて新しいコンテンツを作り、リダイレクトを解除する????
表層的なSEOにとらわれて考えるとこんなややこしいことを考え始める。
運用として不自然で手間がかかるし、SEO的な観点で考えてもこれまた駄目だ。
※以下は蛇足で、どうでもよい話なので読まないこと推奨である。
なぜSEO的な観点で駄目かというと、本来最も評価を高めなければならない今年の商戦の/xmas/というURLの評価は上がりにくくなる。最終的にはリダイレクトを解除しても、/xmas/というURLにリンクの価値が即座にわたることはなく、また相当部分が失われてしまう可能性もある。
で、昨年のページに対して張られていたリンクであるが、その昨年の内容だから張られていたとしても、結局最終的にリダイレクトも解除されてしまうので、そのコンテンツそのものに対するリンクは残すことができない。
結局、この方法はSEO的にもデメリットしかない。これなら最初から/xmas2013/というURLで公開した方が遥かにましである。
脱線が長くなった。
検索エンジンに対して新しいURLに評価を渡してやることに極端にとらわれる必要はないってことだ。
渡辺氏の書いている解決策は自然で、ごく普通に考えればこうなるという当然の帰結である。
この例をはじめとしてごく普通にごく自然にごくシンプルに考えることが最も正しいことを教えてくれる。
正しい考え方によって、ユーザービリティもSEOも両立させられることが分かる。
この本は知識を身に着けるというよりも、正しい考え方を学ぶ本だと言える。
またWebサイトは作って終わりではなく、普通は作ったところからがスタートだ。拡張、更新が命である。
通常SEOは静的な状態においてどうなすのが正しいのかという視点で語られることが多い。
どのように運用していくべきか?についても含蓄のある示唆が数多く含まれている。
分量も少なくさらっと読めるので是非一読されたい。
簡単に読める本は一見馬鹿にされがちだが、難しいことをわかりやすく簡単に表現することは並大抵ではできない。
血肉にするほど深い理解がなければできないことである。このようなものを書けるのはやはり業界の第一人者だからだろう。
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