Webの販促手法の中でのSEOの位置づけ

essence

図1:AISASモデルの概要

AISASモデルのドーナッツ図

前回の記事で、阿部 圭司氏の新刊「新版 リスティング広告 成功の法則」を取り上げた。

この本の第1章に、消費者行動モデルからみたリスティング広告の位置づけを論じる記述があった。
私はこれを読んで、もっと広くWebでの販促手法全般及び、その中でのSEOの位置づけについて考えてみたくなったのである。

消費者行動モデルについてまずは簡単に書いておこう。
消費者が購入時にたどる行動・心理状況の変遷の説明には様々なモデルがある。
その中でも、インターネットでの行動を説明するには阿部氏も言うように「AISASモデル」が一番しっくりくる。

  1. Attention
    その商品に対する情報を目にして
  2. Interest
    興味が生まれて
  3. Search
    その商品について検索して
  4. Action
    購入する
  5. Share
    使った感想などの情報を共有する

私としては共有された情報を誰かが目にするというプロセスが入るため、5から1はつながると考えている。
特にソーシャルメディアの隆盛によって、5から1への展開が起こりやすくなった。
単に1から5への一方通行ではなく、このプロセスを回転させることでより広く大きく情報が拡散し、多くのコンバージョンつまりActionが得られるようになった。

だから私はこのモデルをループ状に表記している。

4のActionを特に大きく表記している理由は、すごろくのゴールのようなものだからだ。

話は少し変わるのだが、Actionの数はどのように決まるのか?

Action数 = サイトへの集客数 × コンバージョン率

である。
集客数が10,000人でコンバージョン率が1%であればAction数は100だ。

Actionを増やそうと考えたら、集客数を増やすか、コンバージョン率を上げるのいずれかが必要になる。
いずれかを2倍にすれば2倍のアクションが取れることがわかるだろう。

このことを念頭に置いて以下の記述を読んでいただきたい。

図2:AISASモデルの中における販促手法の位置づけ

AISASモデルの中における販促ソリューションの位置づけ

他にもWebの販促手法は数多くあるが、上記を代表的なものとして挙げてみた。

上記販促手法はLPOを除いては集客数を増やす手法であり、どのような経路で集客するかが違う。
(LPOはコンバージョン率を高めるための手法)
そしてもう一つ、決定的に違う点がある。

SEOと検索連動型広告はSearchに関与する。
AISASモデルの考え方では何かを購入する直前に検索という行動を起こす。
つまり、もう購入する意思を固めているユーザーが多いということだ。

コンバージョン率が高い良質なアクセスを集められる特徴がある。

特に検索連動型広告にこの特徴は顕著であり、Actionにつながりうるキーワードだけを選択して広告を出すことが可能だ。
海産物を販売するECサイトのケースであれば、

「タラバガニ 激安」「マグロ 訳あり」

といった、即購入に結びつきそうなキーワードだけを選ぶことができる。
SEOもこれに近いのだが上記のような即購入に結びつきそうで、誰もが思いつくキーワードは激戦であり、狙っても上位表示できるとは限らない。

「タラバガニ 激安」といったキーワードは狙いつつ、もっと競合の少ないニッチなキーワードをまずは手堅く取りにいくことが基本的な戦略となる。
「タラバガニ 脚 安い」「刺身用 タラバガニ 激安」といったニッチなキーワードで、かつActionが取れるキーワードである。

これらのキーワードはアクセス数は少ないが、非常にアクセスの質がよい。
検索連動型広告でもSEOでもまずは狙うべきであり、このような質のいいアクセスを獲得できるのがまずは強みである。

Searchからの集客と比較して、Attention・Interestからのアクセスは質が悪く、Actionにつながる可能性が低い。
ユーザーは以下のような心理的な段階にある。

  1. そのサイトは見たことある
  2. 商品にそのもの興味はないが、コンテンツが好きだ
  3. 買うつもりはないが、商品に興味はある
  4. いずれ買うつもりだが、今は買わない


後ろに行くにしたがって、見込みは高くなっていくが基本的に今購入するユーザーではない。
しかし、

ユーザーは育てることができる

のだ。
単純接触効果という心理学の用語がある。
最初は興味がなくても、何度も目にしていると徐々に好意を持つようになるという意味だ。

ソーシャルメディア運用はまさしくここを狙っているのだが、SEOも同じことが可能だ。

海産物を販売するサイトなのだが、サイト内に海産物の様々なレシピが掲載する。
様々な海産物のレシピを検索するたびに、自サイトが検索結果に表示され、実際に記載されている内容がよかったとすれば。
徐々に認知されるようになり、そして信頼できるサイトとして強く記憶されることになる。

「購入しよう」

と思った時に、ここで買おうかということになるわけだ。
SEOは今すぐ客を集めるだけではなく、顧客を作り出すことも可能なのである。

前述の1~4のプロセスを進行させ、ついにはActionに至らせるのだ。

図3:初期投資・ランニングコスト・運用負荷・技術的難易度・対象・集客数の比較
SEO・検索連動型広告・ディスプレイネットワーク・準抗告・メールマガジン・ソーシャルメディア運用・Facebook広告・LPOの初期投資、ランニングコスト、運用負荷、技術的難易度、対象、集客数の一覧
※SEOには人工リンクによる施策を含まない。SEOはあくまで検索エンジン最適化であり、人工リンクによる不正な順位操作は最適化ではないからである。

どの集客手法にも共通していえるのは、成果を出そうとすると投資、運用負荷、難易度が高くなることだ。
まあ、当然である。金もかけず楽して集客する方法などはないということである。

さて、SEOの位置づけはランニングコストをかけずに、不特定多数のユーザーを集客できることが大きな特徴と言える。
初期投資とコンテンツを作り続ける運用負荷をかけ、ある程度の知識があればかなりの集客が見込める。

※2013/5/6追記
住太陽氏から、SEOはビジネスをよく理解している中核的な人材がコンテンツを作らなければならないため、コストとしては非常に高いというご指摘をいただきました。
外部へ支払うランニングコストはないものの、確かに内部におけるコストは非常に高いのもSEOの特性です。

ソーシャルメディア運用もランニングコストがかからないが、SEOに比べると不特定多数に対する集客に弱く、運用負荷が高い。
そして、図2に示したようにソーシャルメディア運用は、質の良いアクセスを集めることが難しいという大きな欠点がある。
これだけでは販促手法として完結しないのである。


さて、まとめてみよう。
SEOの特徴は、

  • ランニングコストをかけず
  • Actionにつながりやすい質の良いアクセスを集めることができ
  • 顧客を育成することもできる
  • 単体で成り立つ販促手法

である、と言える。

ソーシャルメディアの隆盛により「SEOは死んだ」と言われた時期もあった。

しかし、上記の比較によってもわかる通り、SEOの販促手法としてのポジションは依然としてゆるぎないものである。
大きな技術革新がない限り、SEOは最重要の販促手法であり続けるだろう。

とは言え、他の販促手法にもそれぞれメリットがあり、特徴があるためSEOに固執することは望ましくない。
それぞれの手法の特徴を理解して、最適な販促手法を選択することで最良の効果を得るようにすべきである。

コメント

  1. […] SEOとその周辺のWebの販促手法の中でのSEOの位置づけという記事で、消費者行動モデルからみたSEOの位置づけや役割が、わかりやすい図とともに解説されています。 […]

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