今回は検索エンジンの本質について書いてみたい。
タイトルであるが、
とである。
インハウスSEO担当者として有名なSEO村さんの「レコメンド欄が教えてくれた思考法」という記事を読み強く思うことがあったのだ。
ちなみにレコメンデーション(リコメンデーションとも言う)とは、オススメといった意味である。
Webの業界においては、今、何かのコンテンツを見ている人に対して、「これもどうですか?」というコンテンツなり、商品を表示することを一般的に指す。
※インハウスSEOについてもついでに説明すると、広報活動の一環として社内の人がSEOを行うことである。
ほとんどが長期的視点からSEOに取り組んでおり、SEOの効果がビジネスに直結しているゆえに、実践的な知識を持っている担当者が多いのが特徴である。
SEO村さん上記の記事は検索エンジンの本質を非常に深くついているのだが、この記事を読んだ人のほとんどは重要性に気がついていないと思う。
なので私はこのことについて改めて書いてみたいと思った次第なのである。
さて、できれば元記事をご覧頂きたいのだが、ここでは記事を要約してみよう。
amazon.comで折りたたみ自転車を見ると、レコメンデーションにハードディスクが表示される。
これはなぜか?
コンピューターシステムの運用担当者は、システムに障害が発生したときは現場に行かなくてはならないことが多いが、その際に自転車で行くのが最も確実な手段であったりする。
そのため折りたたみ自転車を買う人の多くは、システムの担当者が多い。
システム運用担当者はハードディスクを買うことが多いので、結果的にレコメンデーションにハードディスクが表示されるということだ。
ここからユーザーの気持ちから発想しようという結論が導かれる。
さて、これを読んでどう思われただろうか?
Webでのマーケティングに限らず、全てのマーケティングにこれは言えることである。
また、SEOはマーケティングの一手法なので、SEOに適用するとどうなるのか?というのが私の述べたいテーマである。
実は、検索エンジンはレコメンデーションに他ならないというのが前からの私の考えである。
という、Web全体を対象としたレコメンデーションエンジンが、検索エンジンであるということだ。
そこで、検索エンジンをレコメンデーションエンジンだと考えると、明らかになってくることがある。
一般的にレコメンデーションを行うアルゴリズムには2つある。
この商品を見た人に対しては、このような商品をページを見せるというルールを、運営者側が手動で設定してレコメンデーションさせる。
例えば、
・「タラバガニ」を見た人に対して「ズワイガニ」や「帆立貝」を設定する
・「学習机」を見た人に対して「ランドセル」を設定する
といったような感じでルールを設定するというアルゴリズムである。
この商品を買った人はまた別のそれを買っていることが多いという統計を取り、それをレコメンデーションする。
例えば、
・「タラバガニ」を買った人は、統計的に「ポン酢」「日本酒」を買っている人が多いというこれまでの統計があったとすれば、「ポン酢」「日本酒」が自動的に設定される。
「タラバガニ」を買った人の中で「ランドセル」を買った人がほとんどいなければ、「ランドセル」はレコメンデーションされない。といったわけだ。
この協調フィルタリングはamazon.comで有名な手法で知っている人も多いだろう。
この商品を買った人はこんな商品も買っています
という表示である。
レコメンデーションは先程述べたように、様々なマーケティングに内包される考え方だ。
そして、レコメンデーションの考え方はどのようにSEOに応用されるか?である。
1)集客したいテーマに関連するキーワード単位で、検索エンジンからの集客を狙う。
いわゆる普通のSEOである。
言い換えれば、自サイトに関連する特定キーワードでGoogleからレコメンデーションされるように狙っていくということ。
これは一般のマーケティングでもごく当たり前の手法だ。
例えば、テントを売りたい会社があったとして、アウトドアの情報誌に広告を出すようなものである。
これは普通のルールベースのレコメンデーションの考え方に近い。
2)直接は関係がないキーワードによって、検索エンジンからの集客を狙う。
協調フィルタリングに相当する考え方を取り入れて行うSEOである。
先ほどの例で言えば、折りたたみ自転車に関するキーワードで集客して、ハードディスクを売るといった手法だ。
1992年に紙おむつを購入する人は、ビールを購入する人が多いという有名な記事が発表された。
参照:おむつとビール - @IT情報マネジメント用語事典
この記事はマーケティングの関係者に広く流布した。それだけインパクトがあったということである。
紙おむつとビールという2つのアイテムの間には、先ほどの折りたたみ自転車とハードディスクのような関連が見出されなかった。それゆえに、統計手法によらなければ関連性は見出されないと考えられたからである。
現在は、紙おむつとビールについては、関連がないという検証データが提出されておりほぼ否定されている。
しかし、この記事がもたらしたインパクトは現在も生きているのだ。
これも同様に、
1)集客したいテーマに関連する記事を作成する
2)直接は関係がないテーマの記事を書きそこに導線を貼る
といったことが考えられる。
後者の協調フィルタリングに相当する手法による集客は、少ない費用・労力で済む場合がある。
超激戦キーワード・分野でSEOを行う場合は競合が多く、かなり労力や費用がかかったりする。
ところが、この手法を使えば少ない労力で集客できコンバージョンが狙えるはずだ。
いわゆるブルーオーシャン戦略である。
競合者の多い、血みどろの戦いではなく、競合がいないオンリーワンの地位を築くことが可能となる。
では、具体的にはどうすれば、このような隠れた関連があるキーワードや、コンテンツを見出すことができるのだろうか?
これは非常に難しい問いであり確実な方法はない。というか、あったら誰も苦労しないのである。
と言うわけで、ヒントを挙げるにとどめておく。
これはまさしくこの理論を利用した広告手法であるが、狭い意味でのSEOからは外れてくるので今回は論じない。
これはSEO村さんの記事に書いてあるとおりだ。
テレビCM・雑誌などに掲載されている広告から情報を得ることができる場合がある。
製品のアンケートなどに、
「どんな雑誌を見ているか?どんな番組が好きか?」
といった解答欄を見たことがないだろうか。
これに基づいて、テレビCMや雑誌などに広告を出す場合がある。
全く違ったジャンルの雑誌などに一見場違いな広告が掲載されていたとしたら、それはこのようなリサーチの結果である可能性を考えてみるとよい。
これを利用するのはまさしく協調フィルタリング的手法であると言えよう。
自社が大規模サイトを運営している場合は、一人ひとりのユーザーの行動履歴から分析できる場合もある。
しかし、そのようなデータを使うことはできないのが普通である。
そのようなわけで、マーケティング会社が提供しているデータを試してみるのも一つの手だ。
月間の検索数を調べるといった用途で有名な、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・キュビットが提供するマーケギアといったシステムは使える可能性がある。
利用者の属性検索、流入流出ドメイン調査といったデータを読み解けば、ヒントが得られるかも知れない。
SEOにおいて協調フィルタリング的な手法を応用することは難しい。
しかしながら、ネットだけではなく広く情報収集のアンテナを張り巡らせることで、ブルーオーシャンにたどり着ける可能性がある。
挑戦してみる価値はあると思う次第なのだ。
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